2012年7月1日日曜日

発電とクラゲの関連性の解説



以前も書きましたとおり、私は一般に「火力発電設備」と呼ばれる物の保守管理を行っています。

※私は製造業の人間で、工場自家発電用です。
規模としては複数ありますが、15万kw級の大型が主で、総発電能力は電力会社の発電所と遜色ありません。


ちょっと他所の日記や掲示板等、見て回りましたが、思ったよりクラゲに関しては認識されていない様ですね。
食品被害でちょっとは知れたのかと思っていたのですが・・・

クラゲはヤバイです。
クラゲは本当にヤバイです。

大事な事なので2回言いました。


とりあえず海水、及びクラゲの流れを説明します。

①海水を敷地内へ呼び込みます(自然の流れで。海面の上に敷地がある。)
②そこで、海水は大きな「海水ポンプ」にて、汲み上げられます。
・この敷地内への入り口にまずクラゲ詰まり防止用のカッターがあり、敷地内にはクラゲ用の破砕機があり、クラゲを【クラゲピット】へ排出、廃棄します。

③海水は配管と各ポンプを通り「ストレーナー」という異物除去の為のフィルターを何度も通過し、各設備へと送られます。
・さらに、発電所には「クラゲ管」と呼ばれる、対クラゲ最後の砦があります。
機械的構造によってクラゲを海水の流れから弾き出し、排出する物です。

ちなみに、これから夏場、クラゲ真っ盛りの時期ですが、
このクラゲの排出量。最初のクラゲピットで
1日なんと1000㎥を軽く超えます。(ピークでない)
ちなみに昨日はまだ483㎥でしたが、確実に増えています。
※平時は~6㎥位。
ピークは万超えます
正直夏場のピークなんて取り切れません。限度があります。
『全部取なきゃ話にならない』なんて言ってる人がいましたが、
「じゃ、お前考えろよ。」とツッコミたいですね。
【海水の量を減らさず】、【クラゲのみを取除き】、【配置面積に見合った物】を。クラゲは性質上ピンポイントで除去するのが難しいんです。

そんな『理想』を達成できる物を開発出来れば大金持ちになれますよ?
それなりに高くても間違いなく全国で導入、復旧されますからね。
発電設備の負荷下げや停缶の方が痛いんですもの。
理想だけで物事を語るのは非常に容易でレベルの低い事だと思いますね。



さて、実被害に関してです。
記事にもありますが、発電においてクラゲ被害を最も受けるのは『復水器』と呼ばれる非常に重要な設備です。

【復水器とは】、
通常、タービンの直近真下に一体として配置され、タービンから排出される低圧蒸気を水へと戻す設備です。
戻された水は再度ボイラーへと送られ蒸気となり、タービンを回す循環を成しています。

構造としては管を大量に並べた箱があり、管の中を冷却水(海水)が通り、
その管の外側を熱々なタービンからの低圧蒸気が通る。
イメージは冷水の入ったコップ(管)と、その周りにつく空気中の水滴(蒸気)。
(※イメージし易いかと思って簡単に図を描きました。・・・むしろ解りにくかったらゴメン・・・自宅PCにもExcel欲しいなぁ)

つまり、クラゲ流入や詰まりによって満足な冷却水が得られず、復水器の能力が下がるという事は、タービンから排出される低圧蒸気のやり場に困るという事です。(そのままでは使えません)
そうなると、復水器の能力に排出量を合わせる他なく、タービンの回転数を落とし、出力低下(負荷下げ)となるのですね。




ちなみに、海水はこれだけでなく、発電、工場問わずあらゆるところで大量に使われています。
運転するには冷却を初めとして膨大な量の水が必要ですからね。
タービンを回す蒸気は浄水をボイラーで暖めた物ですが、この浄水だって元々は海水出来ています。(100%では無い。淡水等も使う)

何故なら海水は『0円』で、『取り放題』だからです。
勿論、海水は機械設備と相性が悪く、主な故障要因でもあると言うデメも有りますが。
しかし、全てを浄水や淡水で賄うのは非常に難しいです。
浄水や淡水は『コストが掛かり』、『量を容易するのが難しい』からです。
なので、特にシビアで、大量に必要としない所のみに使われているのが殆どですね。

大きな工場設備が海岸にあるのはそういった理由もあります。

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